旅するやまねこ舎のつれづれ

旅するやまねこ舎@ローカルブックストアkita.(横浜・馬車道・北仲通り)棚主やまねこが本について語ります😸

子供より古書が大事と思いたい 鹿島茂著

ようやく桜🌸が咲いて新年度。昨日はご近所の大学で入学式があった。思えば入学式に桜🌸という光景も久しぶりかもしれない。

さて、「旅するやまねこ舎」の棚主になって月末で丸1年。お買い上げくださった皆さま、誠にありがとうございましたにゃん😸

そろそろ棚のリニューアルを考えたいところで、あれこれ思案中。

そんな中、本の街神保町のシェア型書店「PASSAGE by all reviews 」プロデューサーであり、古書蒐集家、フランス文学者である鹿島茂さんのエッセイを読んでみた。

「子供より古書が大事と思いたい」鹿島茂

1999年11月10日 第1刷

発行所 株式会社 文藝春秋

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本書は『ユリイカ』(青土社)1994年1月号から12月号に連載された「モロッコ革の匂いー古書渉猟」に別のメディアに発表されたエッセイを加え、1995年に単行本発行、のちに文庫本化された。

フランスの古書に取り憑かれてしまった著者の生活破綻ギリギリまでのめりこむ様子はタイトルを見ただけで窺い知れる。

神田の古書店で、19世紀のフランスのロマンチック本(挿絵本)との運命的な出会いが著者のその後の人生を変えてしまった。折しも勤務先の大学から1年間のパリ研修の機会(曰く「旱天の慈雨というべき幸運」)が与えられ、まさしく古書購入三昧の日々となる。

ちなみに「PASSAGE by all reviews 」の代表である 由井緑郎さんの幼少期の出来事が、本書のメインとなるエッセイにあり、家族旅行の最中に大部の古書(『19世紀ラルース』全17巻)と出会ってしまった(もちろん即購入した)がために、窮屈な思いをさせられた不憫さに思わず涙😹💧

ロッコ皮装幀の瀟洒な本は、インテリアとしてガラス戸のついた書棚によく似合う、と思う。

が、フランスの古書店巡りのみならず、ファックスもメールもない時代から、金融機関に多額の借金をしてまでオークションに出品された古書を落札しようとする著者の情熱には恐れ入るほかない。

今にして思えば、1980年代後半の日本は、プラザ合意以後の急速な円高により、空前の海外旅行ブームが到来し、輸入品が格安で入手できるようになった。とはいえ、フランスの稀覯本はそうやすやすと手を出せる価格ではないのに🙀

フランス文学にはまったくの門外漢である私にも、挿絵本の版画の技法の変遷、装幀や古書店の格付けなど、挿絵本購入という未知の世界への誘いとして大いに楽しめた。

もうパリに行くことはないでしょうから、いつか神保町で現物をぜひ見せていただきたいです。