旅するやまねこ舎のつれづれ

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飛ぶ男 安部公房著

3連休最終日。3日前の体調不良はすっかり回復したが、人混みに出かけるのはやめて家で読書をして過ごす。

安部公房の遺作となった小説を読んでみた。

なお、今回はネタバレにならない程度に、ごく短く書きます。

「飛ぶ男」安部公房

1994年1月22日発行、1994年2月22日3刷

発行所 新潮社

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1993年1月22日に脳出血で急逝された安部公房氏の遺稿「飛ぶ男」(未完)と、雑誌新潮に掲載された「さまざまな父」を急いで読んだ。本書は2作を併せて安部氏の一周忌に発行された追悼の書。

久しぶりの安部公房。突然起こる怪現象が、読み進んでいくうちにあたかも以前から計画された出来事であるかと思わせられ、登場人物たちが巻き込まれる事件から目が離せなくなる。

作者の偉大なる妄想癖は読者をどこへ連れ出すのか⁇

窓外にパジャマ姿の男が飛んでいる。その男を空気銃で狙撃してしまった女と、その男の兄(高校教師)とが奇妙な関係になっていく。

書かれた作品は構想の半分くらいかな⁇

終盤は、行間がとびとびで、作者ご本人は、まさかこの状態が遺稿となるとは予想していなかったに違いない。

「さまざま父」の方は、薬を飲んで透明人間になった父と、その息子とのやりとりが中心の短編。「飛ぶ男」の予告編的な作品。父の肉体が徐々に見えなくなっていく描写や、息子のアンビバレントな心理の推移などに引き込まれ、あっという間に読了。

それにしても没後31年、とは月日が経つのはホントに早い🫢