久々の更新です。
やまねこは、ここしばらくラゴスさんと旅に出ていました。でも一緒に転移できませんでした。
筒井康隆 著
1986年9月 徳間書店より刊行、1989年7月 徳間文庫に収録
1994年3月25日新潮文庫版 発行
2014年1月25日16刷改版
2015年12月5日33刷
発行所 株式会社 新潮社
人生初のSFは小学生の頃読んだ「時をかける少女」だったか?NHKでテレビドラマ化され、後に映画化されたが映画は観ていない。確か、ラベンダーの香りを嗅ぐとタイムトラベルできるということだったと思うが、小学生の頃にはラベンダーを知らず、なんだか暗くて奇妙な超能力少年が不思議だった。
さて、久々の筒井ワールドは現実逃避の楽しい時間。
本書は「旅するやまねこ舎」にちなんでタイトルに「旅」がつく作品を検索したらヒットした。
ラゴスは一体どんな旅をするのか…タイムトラベルか?と思いきや、正統派の冒険旅行であった。彼の移動手段は「スカシウマ」。一体どんなウマ⁇…読了後も詳細は不明だが、長い長い旅のパートナーである。
まず放浪する牧畜集団に加わり、牛馬を売りに行くために北方の都市リゴンドラへ。スカシウマ6頭、ミドリウシ11頭を残して牛馬は買い取られ、残った家畜と40人ほどの集団は多くの荷物を持って円陣を組む。ビタハコベの白い花が咲くシュミロッカ平原へ集団転移するためである。パイロットを任されたラゴスは周囲の人やけものと同化、シュミロッカ平原への思いを喚起することでトリップを成功させる。
ここまでは良かったが、この後は何度も囚われそうになり、2度も奴隷にされる。
ボロの盆地では、先祖が残した本を読むために逗留の末2人の娘と結婚し、「王様」と呼ばれるが15年過ごした「王国」を去り、最後の旅に出る。
(他のエピソードはネタバレにならないように割愛します。)
まあなんともいろいろあったが、読み終えてみると、これはラゴスの半生を描いた真面目な小説で、奇異な世界の話ではない。特に後半はラゴスの葛藤や逡巡に引き込まれて、切ない気分になってくる。
村上陽一郎氏の解説も秀逸です。