旅するやまねこ舎のつれづれ

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新版 レミは生きている 平野威馬雄 著

台風7号は西日本に甚大な被害をもたらし日本海へ抜けた。すると再び猛暑日が戻ってくる。

終戦の日の昨日、アメリカ人の父と日本人の母をもつが故に日本社会から排除された経験を綴った名著「レミは生きている」を、和田誠さん(威馬雄さんの娘婿)のイラスト入りの新版で読んでみた。

ちくま文庫「新版 レミは生きている」

平野威馬雄 著

2022年8月10日 第1刷

発行所 株式会社 筑摩書房

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著者の平野威馬雄さんは、歌手で料理家の平野レミさんのお父さま。あとがきには、後年、威馬雄さんが主宰した「レミの会」(混血児の支援活動)開催時に、レミさんが母、清子さんの料理を手伝ったことが現在のお仕事にずいぶん役立っている、とある。本書はアメリカ人の父と日本人の母を持つ威馬雄さんの幼少期(1900年生まれ)から、太平洋戦争後までの回想記。

横浜の港が見える野毛山に住む威馬雄さんに、父はアメリカからたくさんのプレゼントを送ってくれる。しかし、幼い威馬雄さんに会うことは、5年に1度とか8年に1度しかない。威馬雄さんにはその理由がわからない。父はプレゼントに「かわいいイマオさん」とか「かわいいレミちゃん」と書き添えてくる。「レミ」とは父が大好きな、フランスの作家エクトル=マーローが書いた「家なき子」に出てくる男の子の名前であることを母に知らされるが、そんなふうに呼ばれることが威馬雄さんは嫌でたまらない。(後年の活動を「レミの会」と命名した起源はここにある。)

ある日、小学校の友だちに、みんなの前で、父が西洋人であることを指摘されるが信じられない。息せききってうちへかけ込むと、母は悲しそうにうつむくばかり。そんな母は人に「らしゃめん」と蔑まれることを心から恐れていた。

今から100年以上昔、明治時代の横浜の話。

「レミ」たちの背景には、日米関係の変遷がある。その後、太平洋戦争終結後も横浜は1952年までアメリカに接収されており、多くの「レミ」たちが生まれた。

横浜市のサイトのリンクを貼ります。

https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/kichi/sesshu/yokohhama-rekishi01.html

威馬雄さんは横浜山手の外人墓地に眠っています。横浜へお越しの折は是非訪ねてください。


なお、1977年に講談社より発売された旧版も味のある素敵な装丁の本です。入手は難しいかもしれませんが、横浜市の図書館で借りられますよ!